筋書きの無いドラマ

よく野球で使われる言葉だ。そりゃあ、筋書きがあったらただの八百長だ。

サッカーなどと違い、一気に最高4点入ったりするから、最後まで気を緩めることが出来ないスポーツ、それが野球。

昔、夏の高校野球で栃木代表葛生高校と広島代表山陽高校の試合があった。9回2アウトまで葛生高校が4点をリード。誰しもが葛生の勝利を確信した。しかし・・・そこから山陽高校の猛攻撃が始まり、なんと4点差をひっくり返して逆転勝ちしたのだ!こんなことってあるんだね。

他にも、こんなすさまじい試合があった。1984年の第66回大会の一回戦、鳥取代表・境高校と西東京代表・法政一高校の試合だ。

この試合で、境のエース安部伸一はノーヒットピッチングを演じる。対して法政一のエース岡野憲優も散発4安打に抑える好投。0対0のまま延長へと突入した。

ドラマは10回裏に起こった。安部は1番岡村勇司、2番早川和彦を簡単に退け早くもツーアウト。延長11回が見えてきた。そして打席には3番末野芳樹が入る。

末野はキャッチャー。投手心理を読むのに長けていた。そして読みが的中・・・安部の投じた124球目は末野に弾き返され、そのままホームラン。サヨナラホームランだ。

安部のノーヒットノーランの夢も、甲子園一勝の夢もすべて打ち砕く一撃。この試合初めて打たれた、唯一の安打がサヨナラホームランになろうとは、安部自身も、境高ナインも、そして法政一高ナインも考えもしなかったろう。

野球の神様は、かくもとんでもないドラマを用意する時があるのだ・・・